地域課題をビジネスで解決する! 福井発ITベンチャーの挑戦

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 こんにちは。ふくい産業支援センターで、福井県におけるベンチャー支援を担当している岡田です。
 
 都市圏のほうが「ヒト・モノ・カネ」へのアクセスが有利という点で、ベンチャーは大都市圏に集積して展開するものと思われがちですが、実は今、地域課題・社会課題などのビジネスの種が眠っている地方に注目が集まっています。
 
 県内で成長意欲の高いベンチャー企業をご紹介するシリーズ。2回目の今回は、地方の課題解決型ビジネスモデルを手掛けるITベンチャーで、福井県初の官民ファンド「ふくい未来企業支援ファンド」より第1号案件として資金調達を実施した、株式会社フィッシュパス(坂井市)の事例をご紹介します。
 
 よろしければ、ご覧ください!

きっかけは遊漁券未購入問題

 

 株式会社フィッシュパスは2016年10月に創業した、地方の課題解決型ビジネスモデルを手掛けるITベンチャーです。当センターでは、ビジネスモデルの構想段階から継続支援しています。

 日本の河川は全国830の漁業協同組合によって管理されていますが、経営不振により、内水面漁協の多くが苦境に立たされています。経営不振の理由の一つが、「遊漁券」の未購入問題です。しかし釣り人は、何も最初から無許可で釣りをしようと思っているわけではありません。遊漁券を購入できる場所や購入できる時間帯に制限があるため、遊漁券を買いたくても買えず、結果的に遊漁券の売り上げが落ちている状況です。

 そこでフィッシュパスは、24時間いつでも遊漁券が購入できるスマートフォン・タブレット端末向けのアプリ「FISH PASS」を開発し、2017年6月に提供を開始しました。アプリ経由の購入であっても、販売はあくまで地元販売店であり、既存の販売店の売り上げとなります。FISH PASSと提携しアプリを導入した内水面漁協の1つは、遊漁券の売り上げが前年比1.5倍に増加したそうです。さらには「FISH PASS」は、GPSを使ってアプリを利用している釣り人の位置情報を得ることで、漁場の監視業務や河川整備の効率化も実現しました。

 現在の提携漁協数は60。4年後には500の漁協との提携を目指すまでに拡大しています。
 


 


 

日本の川・地方の未来を変えるために上場を目指す

 
 西村社長は、はじめからビジネスを大きくしようと考えていたわけではなかったそうです。「最初は竹田川周辺の地域おこしができればそれでいいくらいの、軽い気持ちだった。いつでも事業をやめられるよう、人も雇わず小さくこじんまりとするつもりだったのが、福井ベンチャーピッチへの登壇など、産業支援センターのベンチャー支援を受けていく中で、自分のビジネスモデルの成長可能性を感じ取り、思い切って舵を切った」とふり返ります。
 

 2020年8月には中村副知事を表敬訪問し、「2025年を目標に上場を目指す」と語った西村社長。「弊社に注目が集まることが、未来の川を守ることにつながる最大の効果だと考えている。日本の川・地方の未来を変えるためにも、上場に向けてがんばりたい」と意気込みます。
 


 

担当者のつぶやき

 
 今回の事例はいかがだったでしょうか。高齢化・人口減少・過疎化などが進む福井のような地方では、解決すべき課題がいち早く顕在化するため、ビジネスチャンスを得られやすいとも言われています。身の回りにある地域課題・社会課題に目を向けてみると、新たなビジネスの種が見つかるかもしれません。
 
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 本記事は、ふくい産業支援センターが発行している情報誌「F-act」に掲載されています。

★情報誌 F-ACT(ファクト)
https://www.fisc.jp/fact/


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岡田 留理(おかだ るり)

公益財団法人ふくい産業支援センター職員。特定社会保険労務士。 開業社労士時代は、中小企業の顧問、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントを経験。2015年にふくい産業支援センターに入職した。 2015年よりふくい創業者育成プロジェクト(現ふくいベンチャー創出プロジェクト)を担当。2017年に「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げ、県内ベンチャー企業の登竜門となるピッチイベントへと成長させる。2018年、近畿経済産業局が取りまとめる関西企業フロントラインにて、関西における「中小企業の頼りになる支援人材」として紹介された。 ★President Onlineに寄稿した記事→http://urx2.nu/pVYq

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