「福井県におけるベンチャー支援」については、新しい情報を掲載したブログ記事を2022年7月30日に新たに書きました。よろしければこちらをご覧ください。
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https://www.s-project.biz/staff-blog/fisc_vss_2022
ふくい産業支援センターでは、福井県における創業・ベンチャー支援事業を立ち上げ、運営しています。
本取り組みを多くの方に知ってもらいたいという思いから、福井県内のベンチャー企業を取り巻く環境と、ふくい産業支援センターの支援事業の現状について、レポートにまとめました。
長文になりますが、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
※本レポートは、ベンチャー支援を始めた一担当者の視点でまとめたものです。県内の状況を網羅したものではないことをあらかじめご了承ください。
こんにちは。
福井県における創業・ベンチャー支援事業の、企画・運営を担当している岡田です。
目次
福井県における創業支援事業の立ち上げ
社長輩出率、35年連続全国1位の福井県
福井県は社長の多い県として有名です。
人口10万人当たり「社長輩出率」は1.43%で、35年連続全国1位です。
福井県にはメガネ、越前和紙、繊維などの産業が多く、独立資本の企業が多いことが特徴です。特にメガネにおいては全国の90%以上のメガネフレームを生産しています。
メガネ自体はとてもシンプルなものですが、メガネの生産工程は150以上といわれており、必然的に下請けや卸業など関わる企業も増えることから社長が多く生まれるといわれています。
福井県の開業率は、全47都道府県中40位
一方で、社長輩出率と同じように新規の創業率も目覚ましく多いかというと、そうではありません。
2013年6月に示された「日本再興戦略- Japan is BACK」で、国は開業率の倍増(4.6%→10%台)を目標に掲げていますが、福井県の開業率(新規創業率)は3.7%と全47都道府県中40位です。(※厚生労働省「平成27年度雇用保険事業年報」)
「ふくい創業者育成プロジェクト」の創業支援スキーム
そういった状況をふまえ、ふくい産業支援センターでは、2015年4月に「ふくい創業者育成プロジェクト」を立ち上げました。
「ふくい創業者育成プロジェクト」では、創業相談窓口やセミナー・交流会の開催、創業準備スペースの提供、創業に役立つ情報の発信などを通じて、創業に興味のある段階から、創業後、事業を軌道にのせるまで、段階に応じた支援をおこない、創業者をバックアップしています。
以下は、現在実施している2018年度の「ふくい創業者育成プロジェクト」のスキームです。(年々バージョンアップしています。)
創業相談窓口の実績推移
上記のスキームにより、段階に応じた支援をおこなった結果、創業に興味をもつ人や実際に創業する人の数が着実に増えています。
一例として、ふくい創業者育成プロジェクトが運営する「創業相談窓口」の実績をご紹介します。
(以下の数字は、実際に福井県産業情報センターに来所し創業マネージャーに対面相談した人数です。)
「創業相談窓口」でお受けする相談内容は、多種多様です。
女性や若者やシニアなどの多様な働き方の一形態としての創業、新たな商品・サービス創出の一形態としての創業、地域資源の活用の一形態としての創業など、さまざまな観点・切り口から創業の相談にのっています。
福井県におけるベンチャー支援事業の立ち上げ
福井県の上場企業数は14社
福井県の上場企業数もまた、開業率(新規創業率)と同様に目覚しく多いわけではありません。
福井県内の上場企業数は、2018年3月現在で14社です。
記憶に新しい2017年のユニフォームネクスト株式会社(本社福井市)の上場も、福井県内の企業では前田工繊株式会社(本社坂井市)以来、10年ぶりの新規上場でした。
※写真は福井新聞オンラインより
福井県におけるベンチャー支援の状況
2015年6月に示された「日本再興戦略」改訂2015で、国は、経済社会や産業構造全体に大きなインパクトを与える、ダイナミックなイノベーション・ベンチャーが連続的に生み出される社会構築の必要性をうたっていますが、一方で、福井県におけるベンチャー支援の施策は充実しているとは言えない状況でした。
ピッチイベントの企画に着手
上記の背景をふまえ、ふくい産業支援センターでは、2017年度より「ベンチャー支援事業」を立ち上げました。
ベンチャー支援事業として、まず着手したのはピッチイベント(福井ベンチャーピッチ)の企画・運営です。(下記図でいう赤い部分です。)
スピード感をもって事業拡大を狙うベンチャー企業にとっての重要課題は、ベンチャーキャピタル(VC)や金融機関、事業会社等とのビジネスマッチングです。
ふくい産業支援センターでは、定期的にピッチイベント(福井ベンチャーピッチ)を開催して成長意欲の高い起業家がベンチャーを支援する機関と出会う場を創り、新たなビジネスパートナーの獲得や資金調達を支援し、起業家の成長を促す機会を提供する必要があると考えました。
ピッチイベント企画する上での地域的課題や問題
ですが、ピッチイベントを企画・運営する上で、以下のような地域的課題や問題もありました。
①VC活用やピッチイベントの認知度が低く、開催する土壌が整っていない
東京や大阪などの都市圏では、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けてビジネスを拡大させているスタートアップ企業は多数存在します。ですが福井県では、VCなどから資金調達して事業を拡大させるという考え方は、あまり馴染みがありません。
また、東京や大阪などの都市圏では当たり前に開催されているピッチイベントですが、福井県ではまだまだ認知度が低いです。ピッチイベントの存在自体知らない方が大多数で、また、関心をもってくれた方の中でも、ピッチイベントに期待する事項についてはバラつきがありました。
このような理由から、まずはピッチイベントを開催する土壌づくり(普及・啓発)から始める必要がありました。
②地域的条件や予算規模が似ている、地方開催の事例がほとんどない
東京や大阪などの都市圏に比べて福井県は、「ベンチャー企業数やベンチャー支援者数の絶対数が少ない」「市場規模が小さい」「交通アクセスが不便」など、ピッチイベント開催にあたって課題がたくさんあります。
一方で、福井と同じような地域的環境(非常に田舎)で、しかも同じような予算規模(非常に低予算)で定期開催されている他県の事例はほとんどなく、参考事例の無いまま、手探りで企画に取り組んでいくほか方法がありませんでした。
③ピッチイベントの登壇や聴講に関心の高い企業に出会う方法がわからない
ピッチイベントの開催は県内初の取り組みであったため、どこに行けばピッチ登壇に関心の高いベンチャー企業に出会えるのか、ベンチャー支援に関心の高い企業や組織に出会えるのか、全く見当がつきませんでした。
ただ、じっと待っていても誰も集まってこないのは火を見るよりも明らかでしたので、新聞記事の切り抜きを頼りに登壇に関心をもってもらえそうなベンチャー企業を訪問して歩いたり、ベンチャー支援者の集まりそうな場所に参加させていただいたりしながら、登壇企業や参加者を募っていきました。
福井ベンチャーピッチの定期開催の実現
そんな準備期間を経て、福井ベンチャーピッチの定期開催を実現させることができました。2017年度の間に2回開催し、2018年度も2回開催する予定です。
第1回「福井ベンチャーピッチ」
第1回「福井ベンチャーピッチ」は、2017年10月24日に、福井県国際交流会館を会場に開催しました。
県内のベンチャー企業5社が登壇し、総勢90名の方にご参加いただきました。
詳しい内容は、下記の報告ブログをご覧ください。
https://www.s-project.biz/staff-blog/2017-10-24
第2回「福井ベンチャーピッチ」
第2回「福井ベンチャーピッチ」は、2018年3月13日に、ハピリンホールを会場に開催いたしました。
県内のベンチャー企業5社が登壇し、総勢130名の方にご参加いただきました。
詳しい内容は、下記の報告ブログをご覧ください。
https://www.s-project.biz/staff-blog/venture-pitch-2018-3-13
第3回「福井ベンチャーピッチ」
2018年度も福井ベンチャーピッチ、開催いたします。
第3回福井ベンチャーピッチでは、堀 新一郎氏(YJキャピタル株式会社 代表取締役社長)を基調講演の講師に、斎藤祐馬氏(デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長)をはじめとした4名の方をアドバイザーとしてお招きする予定です。
現在、登壇者を募集しています。ご興味をもってくださった方はぜひ下記サイトをご覧ください。
福井県における、ベンチャーを育てる好循環
福井ベンチャーエコシステムの芽
私自身の知識不足がゆえに、福井ベンチャーピッチ立ち上げ当初は、福井県にはベンチャー支援施策もなく、登壇希望者やベンチャー支援者がどこにいるかもわからず、何もかもゼロからのスタートだと思い込んでいました。
ですが、福井ベンチャーピッチのスタートの準備を進めているなかで、ベンチャーを育てようとする土壌も、ベンチャーを応援したいと言ってくれる方も、福井県のなかにも確かに存在していることに気づきました。
また、福井ベンチャーピッチの企画と時を同じくして、県内ベンチャー企業育成に関する新たな動きが出始めています。
ここではそんな「福井ベンチャーエコシステム」ともいうべき「福井県における、ベンチャーを育てる好循環」の芽と、当センターのベンチャー支援事業の今後の方向性についてご紹介していきます。
ユニフォームネクスト(株)の上場による機運の高まり
業務用制服ネット販売の大手のユニフォームネクスト株式会社(福井市)が東証マザーズに上場したのは、2017年7月。ちょうど福井ベンチャーピッチの準備に奔走している頃でした。
県内企業では10年ぶりの新規上場に、県内での上場機運が一気に高まりました。
また、「福井と言えばユニフォームネクストさん!福井の企業ってどんな感じなの?」と、福井の企業に関心をもつVCも確実に増え、その会話がご縁にとなり、福井ベンチャーピッチに参加してくださったVCもいらっしゃいました。
福井県におけるベンチャー支援施策にとっても、ユニフォームネクスト株式会社の上場は大変な追い風となりました。
ベンチャー企業を応援する県内企業経営者の協力
第1回福井ベンチャーピッチ開催直後から、「県内上場企業の社長をはじめとした、県内企業経営者のリーダーシップ無くしては、ベンチャー支援施策をスピード感をもって実施していくことは難しい。」という課題感を抱き、実はずっと悩んでいました。
ユニフォームネクスト株式会社の横井社長や前田工繊株式会社の前田専務に思い切ってご相談したところ、ご多忙であるにも関わらず、福井県におけるベンチャー支援の施策に力を貸していただけることになりました。
県内企業経営者のご協力を得られ始めたことで、状況は一気に好転し、ベンチャー発掘事業の拡充の実現にこぎつけることができました。
ふくい未来企業支援ファンドの設立
2018年3月に、福井県初の官民ファンド「ふくい未来企業支援ファンド」が設立されました。
福井ベンチャーピッチ登壇企業のうちの複数社が、ピッチ登壇後にIPOに関心を持ち、「ふくい未来企業支援ファンド」のプレ・デューデリジェンスの段階に進んでいらっしゃいます。
「福井ベンチャーピッチ」で発掘されたベンチャー企業が、次のステップである「ふくい未来企業支援ファンド」に意欲を出す。これもまた、福井県における、ベンチャーを育てる好循環の一つと言えます。
BBR経営塾をはじめとした成長意欲の高い経営者のコミュニティの存在
福井県には「BBR経営塾」という、ゲンキードラッグストアーズ株式会社の藤永賢一社長が開催している、若手経営者の勉強会があります。会員は120名近くいらっしゃると伺いました。
成長意欲の高い経営者が集まる勉強会が福井県にすでに存在していることを知った時は、とても感動しました。(先ほど紹介したユニフォームネクストの横井社長も会員として活動していらっしゃいます。)
そのような勉強会に参加される方々が、福井ベンチャーピッチ登壇に興味をもってくださったり、実際に登壇してくださったりする循環もまた、福井ベンチャーエコシステムの産物であり、とてもありがたく感じています。
ベンチャー発掘事業の拡充
ふくい産業支援センターでは、「福井ベンチャーエコシステム」ともいうべき「福井県における、ベンチャーを育てる好循環」の芽を育てるべく、ベンチャー発掘事業にさらに力を入れていこうと考えました。
定期開催している「福井ベンチャーピッチ」の他、新たに3つの事業を加えたことで、福井県のベンチャー発掘事業はさらに強化されました。
2018年度より新たに拡充したベンチャー発掘事業は以下の3つです。
①福井ベンチャー塾
2017年に東証マザーズに上場した、ユニフォームネクスト株式会社 代表取締役社長の横井康孝氏を塾長に迎え開催する、実践型の勉強会です。横井社長からのアドバイスはもちろん、塾生同士意見を交わしながら、経営戦略や経営者としての在り方を学んでいきます。
2018年4月24日に福井ベンチャー塾のプレ・イベントを開催し、2018年5月より福井ベンチャー塾が始動いたしました。現在、過去のベンチャーピッチ登壇者など、成長意欲の高いベンチャー企業の社長が塾生として参加しています。
※写真は福井ベンチャー塾プレ・イベントの様子です
上場企業の社長自らが講師となり、塾生を1年間かけて継続的にサポートする取り組み(しかも受講無料です)は、全国的に見ても大変貴重な機会ではないかと思います。
福井ベンチャー塾開催するにあたり、県内というよりはむしろ県外の方から問い合わせや反響を多くいただいたのがとても印象的でした。
②ふくい創業者ゼミ
第2回福井ベンチャーピッチ登壇者でもいらっしゃる、株式会社ドラフト 代表取締役CEOの伊藤佑樹氏をメイン講師に、ユニフォームネクストの横井社長をアドバイザーに迎え、2018年8月より開催いたします。
ふくい創業者ゼミでは、創業5年以内の若手経営者にターゲットに絞り、次世代の福井県を担うベンチャー企業の育成に取り組んでいきます。
※写真は昨年度の様子です。
ふくい創業者ゼミの開催にあたり、2018年6月14日(木)にプレ・セミナー&説明会を開催いたします。
こちらのプレセミナー&説明会は、すでに定員を上回る方からご応募いただいておりますが、会場のキャパシティー的にあと数名であれば受付可能ですので、ふくい創業者ゼミにご興味のある方はぜひお早めにお申込みください。
③福井ベンチャー企業個別相談窓口
ふくい未来支援ファンドの運営会社でもある、株式会社福井キャピタル&コンサルティング ベンチャーキャピタリストの前田英史氏を、ふくい産業支援センターの創業マネージャーに迎え、福井ベンチャー企業を対象にした個別相談窓口を月に1回開催しています。
※写真は第2回福井ベンチャーピッチ個別プレゼン予行の様子です。
前田氏は、こちらの個別相談窓口のほか、福井ベンチャーピッチの個別プレゼン予行の指導などにも関わっていただいています。
前田氏の個別相談のご予約も承ります。ご興味のある方は下記問い合わせ先までご連絡ください。
編集後記~広げていきたい!福井ベンチャーエコシステム
上記のとおり、2018年度の福井ベンチャー支援施策は始まったばかり。これからが本番です。
ただ支援施策を増やして満足していてはダメで、本質的な意味で、福井ベンチャーエコシステム(福井県における、ベンチャーを育てる好循環)の芽を育てていくためには、福井のベンチャー企業を応援してくださる県内企業経営者のネットワークの構築が、何より大切だと感じております。
福井ベンチャーピッチのオブザーバー(聴講)参加などを通じて、福井ベンチャーエコシステムの構築にご賛同いただける県内企業経営者の輪が今後もどんどん広がっていくよう、担当者としてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
◆担当者のつぶやき◆ 私自身が無知だったこともあり、福井ベンチャーピッチの立ち上げ準備には、とても苦労しました。 余裕が全く持てず、いつも1ミリ前しか見えていない状態でしたので、気が回らずに周囲の方々にはたくさんの失礼やご迷惑をおかけしていたことと思います。 にもかかわらず、大きな気持ちで福井ベンチャーピッチに関わってくださった皆様に、この場を借りて心からお礼を申し上げたいと思います。 ふくい産業支援センターは、2018年度も福井のベンチャー支援施策に積極的に取り組んで参ります。引き続き、ご指導・ご協力をよろしくお願いいたします。 (ふくい産業支援センター/岡田留理) |
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■福井県の起業・創業相談窓口
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■ふくい創業者育成プロジェクト事務局ブログ
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■注目記事
〇福井県におけるベンチャー支援
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〇福井県における女性創業支援
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■問合せ先
公益財団法人ふくい産業支援センター
創業・Eビジネス支援グループ 岡田
Tel:0776-67-7416
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岡田 留理(おかだ るり)
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