次ページ » 第4章 女性創業支援2年余りの成果とその活用事例
第3章 「福井式」女性創業支援スキームの内容と特徴
(1)「創業に興味のある女性」専門の相談窓口を設置
第2章でも書きましたが、これまでの創業支援体制では、創業決意前の女性にはアプローチしづらい状況でした。
そのため「福井式」女性創業支援スキームでは、創業に興味のある女性に特化した女性創業相談窓口を、毎月第1火曜日・第3土曜日の月2回設置することにしました。
女性創業相談窓口は、福井県の女性が少しでも利用しやすいように、以下の2点の工夫をこらしています。
①同性の専門家をアドバイザーとして起用
創業決意前の段階では、「家庭や子育てと両立させたい。」「趣味や資格を活かしたい。」など、相談内容がビジネスに限らず、女性特有の家庭や生活のこまごまとした悩みに関係するものも多いです。
※写真は相談の様子です。写真をクリックすると記事にとびます。
そのため、女性創業相談窓口には、ビジネスに限らず、家庭や生活に関する悩みにも共感して対応できる同性の専門家をアドバイザーとして起用し、創業に興味のある方が気軽に相談できるようにしています。
②女性のキャリア支援施設の中に相談ブースを設置
また、女性創業相談窓口をふくい女性活躍支援センター(女性のキャリア形成を支援する施設)の中に設け、「働く」ことに関するさまざまな悩みとあわせてワンストップで相談できるようにしたことで、
「子育て後の再就職はどうしたらよいか」「仕事にやりがいが見つけられずこのままでいいのか」など、
仕事についての不安の解決や、子育てとの両立を考える自然な流れの中で、「創業」をもっと身近に感じてもらえるようになりました。
その結果、平成26年度に総合相談窓口へ相談に来られた女性の延べ人数は4人でしたが、
平成27年度に女性創業相談窓口へ相談に来られた女性の延べ人数は、月2回だけの開設であるにもかかわらず67人にものぼり、
「創業に興味のある女性」専門の相談窓口を設けることは、創業への一歩をふみだすきっかけとして、大きな効果があることがわかりました。
その後も相談に来られる人の数は高止まり傾向にあり、平成27年度以降の女性創業相談窓口へ来た女性の延べ人数は、平成29年6月末現在で154人にのぼります。
(2)「Meet Up☆スクエア」の立上げ~創業への思いを持ち続けるために
福井県では、創業に興味をもったものの、さまざまな事情から一旦あきらめ、何かのきっかけでまた創業に興味をもつというサイクルを繰り返す女性も多く、「創業に興味のある段階から創業を決意するまで」にかかる期間が比較的長くなっています。
そのため、創業に興味をもっている状況からなかなか抜け出せずに、そのうち創業自体をあきらめるケースも少なくありません。
そこでふくい産業支援センターでは、図4のとおり、女性創業相談窓口に加えて、「創業に興味のある段階から創業を決意するまで」にいる女性を対象にした女性創業セミナーを開催し、
女性創業セミナーから女性創業相談窓口へ、女性創業相談窓口から女性創業セミナーへというように、それぞれのタイミングや状況に応じてサービスを利用しやすい仕組みを作りました。
とくに女性創業セミナーを実施するにあたっては、以下の2点をふまえて、女性創業セミナー&交流会「Meet Up☆スクエア」を企画しました。
①一人で何度でも参加できるオープンな雰囲気づくり
既存の女性グループや団体をコアな参加者として固定せずにその都度参加者を新規で募集し、また、参加者同士での意見交換や講師・メンターへの相談など、交流を目的とした時間を確保したことで、一人で何度でも気軽に参加できるオープンな雰囲気を作りました。
②継続的なセミナー実施と定番化
セミナーの進め方やメンターの起用など、進行内容を定番化させて開催。いったん創業をあきらめた方も「またあそこから始めればいい」と思える場を作り、創業に興味のある女性が創業したい気持ちを持ち続けられるような環境を作りました。
※写真はセミナーの一場面。写真をクリックすると記事にとびます。
女性創業セミナー&交流会「Meet Up☆スクエア」は、講演形式ではなく、進行役の男女のメンターが毎回異なる先輩女性起業家を迎えて創業に至るまでの失敗や成功、苦労などの体験談を伺う、軽快なトークセッション形式で行ないます。
※写真はセミナーの一場面。写真をクリックすると記事にとびます。
まだ創業を具体的に考えていない女性でも、気軽に参加して、「創業するということはこういうことなんだ」と、創業をより身近に感じられる内容になっています。
流行に敏感な女性向けのセミナーは常に目新しさが求められる中、内容を定番化させ、継続して開催する事例は全国的にも珍しく、女性の創業人口の少ない福井の地でどれだけの結果が得られるのか企画の段階では未知数でした。
ですが結果として、平成27年4月から平成29年6月までの間に通算16回開催し、平成29年6月現在で延べ400人以上の方にご参加いただきました。
女性創業セミナー&交流会「Meet Up☆スクエア」の開催は、数多くの女性が創業への一歩をふみ出し始めるきっかけとなり、創業を決意する女性も自然と増加しました。
(3)事業コンセプトの作成をマインド面からもサポート
いよいよ創業を決意した女性が次に忘れてならないのは、事業コンセプトの作成です。
女性はビジネスについて積極的に考えることに苦手意識を覚えるからか、「誰に、何を、いくらで、どのように」といった事業概要をしっかり考えることを後回しにして、やりたい気持ちだけでスタートしてしまう場合も多いです。
その後、売り上げの伸び悩みなどに直面した時に、収益の上げ方やコンセプトの作り方など知識面が不足し、また、ビジネスに対する心構えや、一人で悩みを抱え込むなどのマインド面の問題から、事業がフェイドアウトしてしまった・・というケースも少なくありません。
周囲への気兼ねや、仕事を辞めることで安定収入が得られなくなる不安を乗り越えて、せっかく始めた事業の継続が難しくなることは、とっても残念なことです。
そこで「福井式」女性創業支援スキームでは、「創業決意後、事業コンセプトを作成する」段階の女性を対象に女性創業塾を開催する他、創業マネージャーによる創業相談窓口を設け、知識とマインドの両面から継続的にサポートする体制を作りました。
①女性創業チャレンジ塾の開催
平成28年度から、「創業決意後、事業コンセプトを作成する」段階の女性向けに、女性創業チャレンジ塾を開催しています。
※ビジネスプラン発表会の様子。写真をクリックすると記事にとびます。
「創業」という同じ目的を持った女性が集まり、ともに学ぶことで仲間意識が生まれ、創業時に抱えやすい孤立感が軽減されます。
講座は自分自身の棚卸しや創業の心構えを中心とした構成となっており、「何の制約もなかったら自分はどんな創業を実現させたいか。」という課題に向き合いながら、自分の力で事業コンセプトを作り上げていく過程をサポートしています。
※写真は講座の一場面。写真をクリックすると記事にとびます。
★「女性創業チャレンジ塾」受講生の声(2017.10.25発刊 情報誌F-ACT(ファクト)の記事より)
※写真をクリックするとPDFにとびます。大きくしてご覧ください。
②創業マネージャーによる創業相談窓口
平成27年度から、「創業決意後、事業コンセプトを作成する」段階から「創業計画書を作成し、創業後、事業を軌道にのせる」段階までを一貫してサポートする、創業マネージャーによる相談窓口を設置しています。
中小企業診断士、ITコーディネーターなどの専門家である創業マネージャーが、月15日間常駐してマンツーマンで相談にのっています。
お勤めしている方でも相談しやすいように夜9時まで窓口を開設し、また、常駐場所をコワーキングスペースに設置するなど、気軽に立ち寄れて相談しやすい工夫を図ったことにより、
創業相談に来られた方の良き相談相手として、継続的にサポートできる体制を作ることができました。
★「創業マネージャー」インタビュー(2017.10.25発刊 情報誌F-ACT(ファクト)の記事より)
※写真をクリックするとPDFにとびます。大きくしてご覧ください。
(4)ワークショップを開催し女性特有の弱みを解決
「福井式」女性創業支援スキームでは、女性の創業を支援するにあたり、福井県の実情に合わせて行なう必要があると考え、「創業に興味のある」段階から「創業決意後、事業コンセプトを作成する」段階にいる女性のサポートに注力してきました。
ですが、当然ながら「創業計画書を作成し、創業後、事業を軌道にのせる」段階においても、女性特有の弱みや課題があります。
そこで「福井式」女性創業支援スキームでは、そういった女性特有の弱みや課題に対して、創業マネージャーによる創業相談窓口で相談にのる他、テーマ毎に少人数のワークショップを開催するなど積極的に支援しています。
これまで開催したワークショップのテーマの中には、女性の苦手とするIT活用をテーマにした「クラウドサービスの活用法」や「無料ツールを使ったホームページづくり」、創業期にかかせない「会計入門」、自分を表現することが苦手な人向けの「プレゼン術」などがありました。
※写真は創業マネージャーが会計のサポートをしている様子。写真をクリックすると記事にとびます。
中でも、数字に苦手意識のある女性でも手軽に取り組める「創業計画書作り」をテーマにしたワークショップが好評でした。また少人数制にしたことで、参加者一人一人の理解にあわせて指導することができ、高い満足度を得ることができました。
※写真は「創業計画書作り」ワークショップの様子。写真をクリックすると記事にとびます。
(5)マッチングアドバイザーがわかりやすく案内
上記のとおり、福井県の実情に合わせて女性の創業を支援することで、たくさんの女性創業者を生み出すサポートができました。
そして、それぞれの段階に応じた創業支援制度を活用し、創業したい女性が自分のペースで着実に準備を進めていくために欠かせないのが、マッチングアドバイザーの存在です。
女性の場合は自身の状況を客観的に把握し説明することが苦手な方が多く、また、過小評価や思い込みから、自身の希望する支援策と実際の状況とがマッチしていないということも少なくありません。
そのため、ふくい産業支援センターの創業支援担当者が、まず創業したい女性の不安や悩みをお聞きして情報を整理した上で、それぞれの段階に応じた支援制度の活用を案内するといった、マッチングアドバイザーとしての役割を果たしています。
そういった積み重ねにより、創業相談に来られた方の現状と利用する支援策との不一致が減っていき、継続して支援制度を活用する方の増加につながりました。
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◆担当者プロフィール◆ 大学卒業後、勤めていた職場を出産を機に退職。子どもが1歳の時、社会保険労務士試験にチャレンジし、合格。翌年、個人事務所を開業。経営と育児と家事を両立させながら、企業の顧問、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントなどに取り組む。2015年4月に(公財)ふくい産業支援センターに入社。県内の創業・ベンチャー支援業務を担当し、現在に至る。(ふくい産業支援センター/岡田 留理) |
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■福井県の起業・創業相談窓口
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■問合せ先
公益財団法人ふくい産業支援センター
創業・Eビジネス支援グループ 岡田
Tel:0776-67-7416
E-mail:ebiz-g@fisc.jp
HP:https://www.s-project.biz/
岡田 留理(おかだ るり)
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