県内の成長意欲の高いベンチャー企業をご紹介するシリーズ。8回目の今回は、増え続ける空き家を買い取り、デザイン性・機能性の高い内外装にリノベーションして販売する「空き家再生事業」を手掛ける まいほむ株式会社(福井市)の事例をご紹介します。
経験を活かし、町の便利屋から事業転換
まいほむ株式会社は、社長の牧野智樹氏が2018年に創業した、空き家を中心に中古住宅を買い取り、自社で丸ごとリノベーションして販売する会社です。
牧野社長は、2011年に町の便利屋として前身の会社を創業。最初は、アパートやマンションのルームクリーニングを手掛けていましたが、お客様への提案営業を続けてきた結果、最終的には年間150室程度のリノベーションを任されるまでになりました。その経験を活かして、2018年から空き家を中心とした中古住宅の買い取り・販売に事業転換し、現在に至ります。
※リノベーション後のお部屋の一例
ビジネスで地域課題を解決する
野村総合研究所の予測によると、2033年には空き家率が30%を超え、その数は2100万戸に達すると想定されています。一方で、日本における全住宅流通量に占める中古住宅の流通シェアは全住宅の14.7%(令和元年・国交省調べ)に過ぎません。
空き家問題は今後もますます深刻になっていくと予想される中、中古住宅の流通が進んでいかない現状に危機感を抱いた牧野社長でしたが、「中古住宅の危険・汚い・不安というイメージ、心理的な不安から結局新築を買うという状況が生まれてしまっている。当社の再生住宅だったらこの状況を打破できるのではないか」と考えました。しかも、空き家の流通量が中古住宅全体の「10%にも満たない」(牧野社長)状況であることから、空き家の再生住宅は成長する分野であると感じたと言います。
最大の特徴は「安心の見える化」
同社の再生住宅の最大の特徴は、「安心の見える化」に積極的に取り組んでいる点です。
販売物件を、優良な中古住宅を示す『安心R住宅』(※)認定にすることもその一つ。「この認定は、手間やコストがかかるわりに消費者の認知度が低く、全国展開する同業大手もなかなか取り組んでいない」(牧野社長)といいます。
2022年4月からは人気ユーチューバー「DIY MAGAZINE」とのコラボ企画もスタート。旧耐震の空き家を新耐震にするリノベーションの過程を動画にして空き家再生住宅を作っていくという企画で、設計の打ち合わせから完成まで、同社のリノベーションノウハウを見える化していく画期的な取り組みです。
これらの取組みには、「『不安』『汚い』『わからない』といった空き家に対するマイナスイメージや抵抗感を払拭したい」という牧野社長の強い思いが込められています。
※安心R住宅とは、耐震性や瑕疵保険など一定の基準を満たした住宅に対して国土交通省がお墨付きを与える制度で、RはReuse、Reform、Renovationの頭文字から取っています。
空き家再生住宅をスタンダートに
牧野社長は、2021年11月に開催された第7回福井ベンチャーピッチに登壇。その後、杉本知事がリフォーム現場に視察に訪れるなど、「金融機関だけでなく自治体からの反響も大きかった」とふり返ります。
「中古住宅を買わない理由をできるだけ無くし、空き家を中心とした中古住宅のリノベーションを住宅流通のスタンダードに、という社会を実現したい。その時に当社がそのメジャーブランドになることが目標です」と牧野社長は自社と業界と将来を見つめています。
※福井ベンチャーピッチ登壇時の様子
担当者のつぶやき
次回の「福井ベンチャーピッチ」は2022年11月17日に開催いたします。登壇に興味のある方は、ぜひ お気軽にお問い合わせください。なお、イベントの詳細はこちらでご覧いただけます。
https://www.s-project.biz/seminar/fvp_8_toudan
________________________________________
本記事は、ふくい産業支援センターが発行している情報誌「F-act」に掲載されています。
★情報誌 F-ACT(ファクト)
https://www.fisc.jp/fact/
岡田 留理(おかだ るり)
最新記事 by 岡田 留理(おかだ るり) (全て見る)
- 【募集中】3.19 「Meet Up☆スクエア」拡大版 開催いたします! - 2016年2月13日